人身事故をおこしてしまったときの流れを解説

2024(令和6)年9月21日(土)から9月30日(月)の10日間は「秋の全国交通安全運動」でした。広く交通安全思想の普及・浸透を図り、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けるとともに、道路交通環境の改善に向けた取り組みを推進することにより、交通事故防止の徹底を図ることを目的としています。

車を運転する人はもちろんのこと、自転車や歩行者なども交通事故に遭わないよう日頃から気をつけなくてはいけません。ところがどんなに気を付けていても事故を起こしてしまったり、思わぬ事故に巻き込まれることもあります。もし車を運転しているときに人身事故を起こしてしまったときはどのように対処したらいいのか、その流れを解説します。

交通事故には種類があります

物損事故と人身事故は交通事故の種類として区別され、事故による被害の種類に応じて異なる対応や法的処理が行われます。

物損事故とは

物損事故は、人が怪我をしない事故で、物の損壊のみが発生した場合を指します。物損事故の典型的な例は、以下の通りです。

  • ・車両の損傷(バンパーの破損や車体のへこみ)
  • ・道路標識やガードレール、塀、家屋などの物に対する損害
  • ・他人の所有物(自転車や駐車中の車など)への損害

対応:警察(110番)に通報し、物損事故として処理されます。相手との間で、修理費用や賠償額について話し合います。通常は、相手の車や物の損傷が保険でカバーされます。物損事故の場合、刑事罰が科されることは基本的にありません。

人身事故とは

人身事故は、人が怪我をしたり、命を失ったりする事故です。物の損壊があるかどうかにかかわらず、人に対して身体的な被害が生じた場合、人身事故として扱われます。たとえば以下のような状況です。

  • ・歩行者をはねて怪我をさせた
  • ・車両同士の事故で運転者や同乗者が怪我をした
  • ・自転車やバイクに衝突し、運転者が負傷した

対応:警察(110番)に通報し、必ず人身事故として処理します。負傷者がいる場合は、救急車(119番)を呼び、救護します。治療費や慰謝料、休業補償などの賠償責任が発生します。人身事故の場合、加害者は罰金や懲役といった刑事罰が科される可能性があり、さらに免許の点数減点や免許停止のような行政処分が伴います。

重要な点として、物損事故であっても、後から被害者が体調不良を訴えると人身事故に切り替わる可能性があります。そのため、事故後は被害者に対して慎重に対応し、体調を確認することが重要です。

車で人身事故を起こしてしまったときの流れ

車で人身事故を起こしてしまった場合、非常に動揺し、あわててしまいがちですが、冷静に適切な行動を取ることが重要です。特に、警察への連絡と負傷者の救護は法律で義務付けられています。事故発生後の基本的な対応の流れを覚えておきましょう。

安全確保

まず、二次事故を防ぐために自分と他の人の安全を確保します。車を安全な場所に移動できる場合は、ハザードランプを点けて路肩に停車し、三角表示板を設置するなどして他の車に注意を促します。

負傷者の確認と救護

怪我をしている人がいる場合は、すぐに救急車(119番)を呼びます。応急処置ができる場合は行い、意識がない場合や重傷の場合は無理に動かさず、医療専門家の到着を待ちます。

警察への連絡

事故が起きたら、必ず警察(110番)に連絡し、事故の状況を報告します。警察に通報しないと、後で事故証明書が発行されず、保険の適用に支障が出る場合があります。

事故現場の保存

可能であれば、事故現場の写真を撮影しておきます。車の位置や破損状況、路面の状態、信号機の状況などを記録します。これにより、後の保険手続きや責任の判断に役立ちます。

相手方との情報交換

相手がいる場合は、相手の名前、連絡先、住所、車両のナンバー、保険情報などを交換します。ただし、感情的にならず冷静に対応することが大切です。

保険会社への連絡

自分の保険会社にも早急に連絡します。事故の状況を説明し、保険の手続きを進めてもらいます。保険会社の指示に従い、必要な書類や証拠を提出します。

警察による現場検証

警察が現場に到着したら、事故の状況を正確に説明します。この段階で、警察は現場検証を行い、報告書を作成します。後日、警察からの連絡を待つことになります。

病院での診察

事故の影響で身体に異常がある場合、必ず病院で診察を受け、診断書を取得しておきます。後から症状が出る場合もあるため、事故直後に異常を感じなくても診察を受けておくことが重要です。

その後の対応

人身事故の場合、加害者としての責任が問われることになります。警察から呼び出しがあれば対応し、必要な手続きを行います。警察からの事情聴取後、調書が検察庁へおくられます。検察庁からの呼び出しにもしっかりと応じましょう。起訴か不起訴かをきめられることになります。また、被害者の治療費や賠償責任についても、保険を通じて対応していくことになります。

交通事故加害者がやってはいけないNG行為

交通事故を起こした際にやってはいけないことを解説します。

救護義務の放棄

救護義務の放棄とは、ひき逃げということになります。ひき逃げは、救護義務を果たした場合に問われる罪よりも、格段に重い罪責を問われることになります。たとえ、どのような状況であっても、負傷者の救護は行ってください。

その場で示談交渉する

事故が軽度の場合、被害者とその場で話し合えることもあるかもしれません。その際に被害者とすぐに示談を成立させてしまう場合が見られます。示談とは損害賠償はいくら支払うかなど、お金に関する合意となります。その場で示談を成立させてしまうと、保険会社からの支払いを受け取れなくなる可能性があります。

また被害者側もその場では大丈夫であっても、のちに後遺症が出てくる可能性もあり、その場での示談は加害者にも、被害者にもデメリットしかないのです。

お金をその場で支払ってしまうこともNG行為となります。そもそもお金を支払ったことを証する書類が残されず、支払った事実を証明できません。また、お金と引き換えに警察へ報告しないよう働きかけることもやってはいけません。

事故の後にやっておくべきこと

事故後にやっておくべきことがあります。

被害者へのお見舞い

保険会社から、被害者とは直接連絡をとらないように言われる場合もあるかもしれません。しかし保険会社に対応をすべて丸投げしたら、被害者も、加害者の態度は不誠実だと感じるものです。誠意をもって被害者にお見舞いをすることで賠償についての現在の状況や今後の解決策について話し合うことをおすすめします。

ただし、被害者が望まない場合には無理に加害者が会おうとするのは避けましょう。被害者へのお見舞いをする場合は数日から1週間以内におこないましょう。

事故後の精神的ケア

人身事故を起こすと、心理的な負担が大きくなることがあります。必要に応じて、カウンセリングを受けたり、家族や友人と話すことで、心のケアを行うことも大切です。

今後の運転に対する反省と改善

人身事故後は、運転習慣を見直し、安全運転への意識を高める必要があります。事故の原因を振り返り、今後の運転に生かすための反省点をしっかり把握し、再発防止に努めます。

まとめ

事故の際は焦らず、冷静に対応することが大切です。また人身事故後の対応は、法的な手続きや賠償手続きが絡むため、冷静に対処し、保険会社や専門家のアドバイスを受けることが非常に重要です。